ちょっといい話(見舞い編)
郊外で空車になり町中へと戻ろうとバス通りをはしっている時の事、小さなタコ焼き屋の店先で手が上がった。
「○×病院まで」
と乗り込んできたのはどうやらタコ焼き屋のご主人、良いニオイのするタコ焼きを膝の上に乗せている。
「旨そうな匂いですね、どなたかに差し入れですか?」
と聞くと、
「う〜ん、そういう訳じゃないんだけど。いや、そうなのかな?」
とハッキリしない。それきりしばらく黙っていたのだが、そのうちこう話し出した。
「実はさ、さっき電話がかかってきて・・」
近所に住んでいてたまにタコ焼きを買いに来る男の子の母親からだったらしい。病気で入院してしまった男の子が(あの店の)タコ焼きが食べたいと言ってきかないので、営業時間を聞こうとかけてきたのだという。
「今日はもう閉店です。退院したらぜひ来て下さい、ご馳走しますって言ったんだけどさ・・」
男の子は白血病だった。いてもたってもいられなくなったご主人は火を落としていた鉄板を温め直し、大急ぎでタコ焼きを焼いてきたのだという。
「今は直らない病気じゃないらしいけど、とにかく食べてもらいたくてさ・・」
きっと今頃は元気になって、又お母さんとタコ焼きを買いに行っていると信じたい。
mura


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